人生で初めて自分で購入した家具は、小さな2人掛けの茶色いソファーだった。
22歳の時、値段は2万円しないくらいだったように思う。
当時私は1DKの小さなアパートに住んでいて、アルバイトをして生計を立てていた。 未開拓の森林を手探りで歩くというよりは、目の前に次々に運ばれてくる料理を無表情で平らげていくような、簡素で面白味のない反面、未来への不安もなく、過去への後悔に苛まれることもない日々だった。おおかた、生きていくということはそういうものだと考えていたし、なんの不満もなかった。
築30年のアパートの部屋には、冷蔵庫とパソコン、横になるとフレームが軋むベッド、小さな折れ脚テーブル。そんなところで、テレビさえ置いていなかった。朝眠い目をこすりながら仕事へ向かい、夕方近所のスーパーで買いものをして家に帰る。
人気のない静かな部屋には、私がする呼吸音だけが響き、なんとなしに開けたビールがなくなる頃には眠りに落ちる。正直、いつか心臓が動くのをやめるまで、こういう日々が続いていくのだと思っていた。凪いだ湖面みたいに。とてもフラットに。ドラマの中では人生を描いていても、人生の中にドラマは起こりはしないのだ。
けれど、どこか遠くの海で起きた、ほんのかすかな波の揺り返しが浜辺に届くみたいに、私の人生にもかすかな変化が起こる。
いつか人生を共に歩く人と出会い、一人で静かに暮らしていた部屋に、別の誰かの鼓動が響き始める。テレビを買い、いつまでも床に座っているわけにもいかなくて、家具屋に向かい、二人でソファーを選ぶ。人生の節目ごとに、油彩のように、部屋を彩る家具が増えていく。現実の中にドラマを求めなくても、生きていくことでそれを作り出しているのだと気づく。
それから随分長い月日が流れ、自分がそのお手伝いをする仕事につくなんて夢にも思いませんでしたが、今、そうしたお客様の暮らしに想いを馳せながら、日々、精進しております。値段やブランドだけでなく、お客様ひとりひとりのライフスタイルにぴったりはまるような家具をご提案できるように。レンタルした軽トラの荷台にソファーをのせて、家路へと向かったあの頃のわくわくする気持ちを込めて。
豊田店 K
